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2008年10月

2008年10月24日 (金)

判例評釈のツボ(我流です)

 博打は昔のように賭場だけでしていただいて,これからは将来につながる(箱物造りではない)地道な「公共」事業(投資)をしていただけませんかね(国内にお金がないわけではないのですから)。そのような大転換のためには,遠回りのようでも,いったん(しかし緊急に!)仕切り直しが必要ではないでしょうか。

 今月は,上旬に久し振りに評釈を書きました。結構よいものが書けましたので,乞ご期待!

 ところで,評釈の書き方については,院生の頃,非常に苦労していました。そのおかげで,我流ではありますが何となく要領のようなものを会得しましたので,それを書いて後進の方々の参考に供します。役立つようなら,使ってみてください(論文のそれとは違いますし,試験答案なんかとは当然大きく違います)。

 まず,論点ごとに学説を整理してそれを事案に当てはめて判決を批評する,というようなのはダメです。そんなものは読んでも面白くないですし,第一,裁判所に何のインパクトもないと思われるからです。
 これに対して,評釈の対象とする判決を,従来の裁判例と事案を比較しながら流れの中に位置づける作業は,必須です。

 上記のことを踏まえたうえで,私が心がけている主要な点は,以下のようなことです(意図的に原則を外れるときが若干はありましたが)。

1.名宛人は,第一に判決を書いた裁判官,第二に上訴された先の担当裁判官

 今後の同種の事案の処理に何らかの働きかけを意図する以上は,この方々に響くところがなければおそらく意味をもたないであろうからです(仕事に打ち込んでいる真面目な裁判官が多いので,意外に,結構読まれているように感じます。国際私法が特殊なのでしょうか?)。

2.内在的な批判であること

 裁判所が採ったのと異なる立場からの(外在的な)批判であると,裁判官としては,そもそも立場が違いますからね,といって軽くあしらってしまわれるでしょう(偉い先生の評釈なら別でしょうが)。したがって,あくまで判決文に密着した検討であるべきです。そのうえで・・・

(1)事実誤認の指摘

 結論を導くために判決が採った理論的立場の理由付けのなかに事実に反する点がある場合には,それを指摘することは効果が大きいのではないかと思います(なかなかそんな場合に出くわさないかもしれませんが)。
 例えば,(以下,拙稿の例で恐縮ですが)船舶先取特権の準拠法につき成立・効力とも法廷地法とした東京地決平成4年12月15日判タ 811号 229頁というのがあります(これをお書きになった判事さんには何の恨みもありませんし,不法滞在外国人の慰謝料の算定基準の判示など,支持できる判示が別件でいくつかあります,念のため)。
 この決定の中から1例をあげますと,「船舶先取特権の成立の準拠法については,……世界の海運をリードする英米両国では,法廷地法によるものとされている。」と判示されています。これが事実なら私は降参だった(?)のですが,調べてみると,米国についてはそうではありませんでしたので,拙稿・ジュリ1051号(1994年)126頁,127頁(および海事法研究会誌の論文)でそれを指摘しました(当時は,かなり勇気が要りましたが)。
 以来,船舶担保の準拠法に関する事例は,公表されていません。しかし,少なくとも東京地裁は依然として法廷地法によっているらしいですので,現場の必要性からでもよいので理由を付したものを公表していただくことを願っております(拙稿「国際私法の現代化における法例10条・12条関連の改正作業の問題点」千葉20巻2号(2005年)93頁,136-137頁注46)。それがあれば,実務を踏まえての学問的発展が期待できますので。

(2)論理的に一貫していないことの指摘

 判決が一定の理論的立場を採る際に,その前提を述べていて,それとの間で一貫性を欠いている場合には,きちんとそれを指摘しましょう。
 例えば,国私百選1事件の原判決である東京高判平成2年6月28日金法1274号32頁は,「相続関係者の立場にとどまらず,取引の安全すなわち第三者の利益の保護が考慮されなければならない」という基本前提を示しながら,「相続関係者の内部的法律関係を規律することを主眼とした法例25条(平成元年改正前-引用者注)を適用することは,右の要請に適切に応えうるものではない」としたうえ,法例10条が第三者の利益保護に資することを確認し後者のみで処理しました。
 しかしながら,これでは「相続関係者の立場」が無視されてしまっているわけで,論理的に一貫していません。それを指摘したのが,拙稿・ジュリ985号(1991年)136頁,137-138頁です。ほかにも,三井評釈や早川(眞)論文も同様の認識でしたので,上記の基本前提を貫いた場合の結論と一致する,後の最高裁判決につながったのであろうと思われます。

 先日書いたものは,これとは逆で,基本前提が貫けないのは基本前提がおかしいからである,という方向での評釈です(活字になるのは,来年になってからですかねえ?)。

(3)判決が採った理屈を同種の別の事案に当てはめた場合に生じる不合理の指摘

 おそらく当該事案の妥当な解決のみを念頭に置いて理屈を立てたのでしょうが,その理屈をその射程に入るはずの別の事案に当てはめてみると上手くいかないことがあります。そのような場合には,それを指摘してあげるとよいです。
 例えば,国私百選24事件の原判決である東京高判平成12年2月3日判時1709号43頁は,ドイツで登録されてイタリアで盗難に遭って日本に輸入され購入された中古自動車の即時取得の準拠法につき,その復帰地(登録地)法であるドイツ法としました。その実質的な理由として,判決は,「即時取得や外国における自動車の二重登録等の法制度の悪用による盗難車のローンダリング(洗浄)を防止する必要」という-実質法的な-価値判断を挙げています。
 確かに,この事案では,復帰地が盗品につき即時取得を認めないドイツだったので,判決の立場によればドイツ法によって-実質法上の-静的安全が図れます。ところが,この理屈を,裏返しの事案(日本で登録されドイツに輸入されたとする)に当てはめると,盗品についても一定の場合には即時取得が認められる日本法によることになり,かえって(この判決が重視する)-実質法上の-静的安全を図りにくくなります。拙稿・ジュリ1193号(2001年)125頁,126-127頁では,この点を指摘したうえで,むしろ-牴触法上の-動的安全を無視できないので他の理由と合わせて日本法の適用を主張しています。他の評釈についても,この判決がドイツ法によったことを批判するものばかりでしたので,最高裁も日本法を適用するに至ったのであろうと思われます。

 以上です。
 もっといいのがあるという方は,ぜひご教示ください。もっとも,企業秘密に属するのかもしれませんが。。。

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2008年10月10日 (金)

秋の日は釣瓶落とし

 虫の音が心地よい秋の夜。
 数日前からキンモクセイの香りに包まれ始め,そう言えば,キンモクセイの香りが気になるようになったのは,ほんの2年くらい前のことだったか。。。

 昨年に放送されたNHKの土曜ドラマ「ハゲタカ」が非常によくできているので,夏休みにDVDを買い,たまに引っぱり出して観ています。大森南朋さん演じる鷲津政彦は(おそらく多くの方と同様に)カッコいいと思うのですが,共感するのは柴田恭兵さん演じる芝野健夫の方で,たぶん歳のせいなのですかね?(30歳くらいのときだったら,どのように感じたんだろうか?)
 それはともかく,振り返ってみると,昨年のNHKは,異例に充実していたような。。。

 今年もまた,合格者7名から,後輩たちに経験を伝えてもらいました。3年生には,ギアチェンジのいい機会になっているようです。他方,今年の2年生は,(初めて感じることですが)何か空気が緩い感じがします。レールに乗ったと,勘違いしていなければいいのですが・・・
 他方,7月に続き,「切り札」のおひとりに助けてもらって,希望者にメンタルケア(?)してもらいました。来年は,激戦ですよ。

 別件ですが,帝国の没落は,あっと言う間でしたね。

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2008年10月 3日 (金)

新司(真摯)にちょっと驚き

 新司法試験については,サンプル問題,プレテストを含めると,もう問題が5年分たまりました。そこで,国際関係法(私法系)の問題については,第3回のものを中心に,傾向がぶれまくっていることを含め,若干の批評をさせてもらうつもりで,つらつら考えをめぐらせています。もうしばらくして,いろいろなことが落ち着いてきたら,ここに書きます(何かの手違いなのか,今年は法科大学院協会のアンケートが私には回ってきませんで,評価をする機会を逸してもいますので)。

 例えば,今年の第1問は,遺言なんていうやや周辺的な問題を出してあって,おやおやという感じはありますが,単年度で見た場合には,全体としてはまずまずの内容でしょう。
 設問ごとに結論のみ示すと,設問1は疑問(理由は後日),設問2は標準的(但し,「出題の趣旨」が遺言の方式の準拠法に関する法律8条の検討を要求しているのは,あまりにセンスが悪い),設問3は多くの受験者の意表を衝くなかなかの問題,といったところでしょうか。

 ところで,今日,ある事件についてやはり評釈を書いておこうと思って判例タイムズ1100号(「家事関係裁判例と実務245題」という臨時増刊;2002年)を見ましたら,植松真生「渉外遺言の方式」(488頁以下)と同「遺言事項その他の準拠法」(490頁以下)とあるのに気が付きました。ある考査委員のお弟子さんの執筆によるものですが,そう言えば,昨年の第2回の第1問設問2(1)(やや据わりの悪い(二重)反致の問題)についても,おやっ,と感じるところがあります。

 振り返ると,プレテストの第1問の設問1は,上記の考査委員の採る異説の存在を前提として論じないと,ほとんど意味のない設問で,先決問題の設問2と合わせて,ズレてるなあ,と国際私法組の(後の)1期修了生たち(昨年までに全員合格しています)の一部の方と話したりしたものでした。

 考査委員(およびそれに近い人たち)の関心を取り込んだ問題を出すことがよくないとまでは言いませんが,5年もの間で(後日示すように)よく練られ,かつ横綱相撲的な堂々とした問題は未だお出しになっていないのであり,新司法試験に要請される最高度の公平・公正に十分な配慮をしていただけないものかという疑問が拭えません(いずれにしても,5年間というのは,控えめに言っても長すぎるのではないでしょうか?)。

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2008年10月 1日 (水)

後期授業開始ほか

 早くも先月29日(月)に,後期の授業が始まりました(学部は,私は明2日(木)から)。
 選択科目の決定はやはり悩ましい問題で,予想以上の数の2年生が出席していました。また,この機会に国際私法を勉強しておこうと考える意欲的な(?)3年生が数人出席していたのも,今年の特徴です。さて,最終的には,受講者は何名になるのでしょうか? しばらくは,落ち着きませんね。

 そう言えば,隣の建物が改修工事で,研究室は工事現場の中という感じです。学生の方が,待遇がよかったりして(まあ,いいけど。騒音には強いので)。

 海の彼方は,いよいよ恐慌の様相を呈してきたようで・・・(国際取引法ではなく,国際倒産法を範囲に入れておけば,多くの人の役に立ったでしょうに・・・) 此方は,「引き際」観も狂ってきたようで・・・

 皆さん,また新しい日々を過ごされていることでしょう。

 先日は,教え子(と言っても,そんなに歳の差ないですよね? 怒らないでー)が赤ちゃんを見せに来てくれました。おとなしい子で,抱っこしても嫌がることもなく,こちらも和やかな気分になりました。ちっちゃくて,可愛いんですよね(その後,運動不足がたたって,少し足が笑いかけましたが)。

 28日(日)夕刻には,合格者祝賀会が催されました。合格者は,修習や就職のことで,早くも不安な気分を伴っているようでした。
 彼らを祝うために,先輩たちも大勢来ていました。
 第1回合格者は,実務経験が1年近くになり,ずいぶん逞しくなっている感じを受けました。外資系では,タイムカードで15時間とか働いているんだとか。あるいは,一般民事では,外国人も多く日本に来ているため,国際私法を使うことがあるんだとか(実際に役に立っているのであれば,こちらも嬉しいことで)。
 第2回合格者は,和光での締めの修習と二回試験を控えて若干の緊張感もあり,他方で,充実した修習をしてきたようで,地方では食にも恵まれていたようです。その所為かどうか,修習先で就職を決めてきた人が結構いました。あと2か月,大過なく過ごしてください。

 また,いろんなことが始まりますねえ。

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