椎名麻紗枝=今西憲之『無法回収』
一時金給付につき高額所得者には辞退を求める,ということになるようですが,「嘘つきが得をする」ということで,昨今の規制の緩い市場競争において「嘘つき」の跋扈を許してきた構造を温存する(Not CHANGE)という発想なのですね!? 呆れました(居酒屋の件も,ですが)。
ところで,最近,椎名麻紗枝=今西憲之『無法回収 「不良債権ビジネス」の底知れぬ深き闇』(講談社・2008年)という近刊を読みました。これは,(ある角度から書かれた)久々の超重要書籍だと判断しますので,金融法制度の検討の素材の1つとされることをお薦めします。
まず,章立てから。
序章 「債権回収」の無間地獄
第1章 骨までしゃぶる「回収の闇紳士」
第2章 RCCの罪と罰
第3章 回収の手先と化した裁判所
第4章 京都の名刹をめぐる「謀略」
第5章 RCC歴代社長のスキャンダル
第6章 棄民国家・ニッポン
終章 「ハゲタカ」から国民を守る方法
貸金業法の改正による「サラ金崩壊」以後,債権回収業務に活路が見出されているようで,「第二のサラ金地獄」の様相を呈してきているようです。国を挙げての(国策としての?)恐ろしい現実が書かれてあります(今や,最後の頼みの綱である裁判所さえも,信用できなくなりつつあるような・・・)。引用したいところがたくさんありますが,控えます。ぜひお読みください(金欠の学生さんは,図書館に購入申請するといった方法もありますね。マスコミがこぞって持ち上げる人物には,後々のために,少し警戒する癖をつけた方がいいですよ(教訓))。
2カ所,引用させていただきます。
バブル崩壊後,不良債権に苦しんでいた金融機関は,サービサー(債権回収業者-引用者注)を歓迎した。
(中略)
あまりに不良債権が膨大だったため,国は金融サービサー法(債権管理回収業に関する特別措置法-引用者注)を整備し,公的資金を金融機関に注入せざるをえなかった。それは要するに,「税金」という形で国民にツケをまわしただけの話だ。
その結果,得をしたのはだれか。金融機関の弱みにつけ込み,ごくごく安価で債権を仕入れ,たいへんな高値で転売して暴利を貪った者たちだ。そこに利益が生まれても,支払った税金を使われた国民には,1円たりとも還元していない。
そればかりか,それまでになかった「回収のスペシャリスト」が数多く誕生した。中には救われた人もいるのかもしれないが,圧倒的に多くの人々が不幸な結末を余儀なくされた。(中略)
『Q&Aサービサー法』(法務省債権回収監督室編,商事法務研究会)の監修者となっている自民党の杉浦正健衆議院議員は,弁護士資格を持ち,自民党ワーキングチームの座長を務めた,いわば金融サービサー法の生みの親の一人である。
(中略)そこ(同法-引用者注)に決定的に欠けているのが,取り立てられる側,「債務者の視点」だ。
(以上,椎名=今西・前掲 44-45頁)
不可解なのは,港債権回収は,三井住友銀行からは4000万円程度で買い取っているらしいのに,港債権回収の代理人の弁護士によれば,W・ケイマンカンパニーはその翌日に,港債権回収から9000万円を超える高額で買い取っているらしいことだ。
(中略)考えられることは,港債権回収は,投資家から高い評価を得るために,高い回収実績を出す必要があったのではないか,ということだ。事実,港債権回収は,スタンダード&プアーズから,商業用ローン・スペシャル・金融サービサーの評価として,日本初の最上級評価「能力が極めて高い」を付与されている。
(椎名=今西・前掲 60-61頁)
「らしい」「らしい」とあるように,債権が実際にいくらで売買されているかを確認することは,なかなか難しいようです。
それはともかく,2つの部分(およびそれらの前後)を眺めると,個別に疑問を感じてきたことが繋がってくるように思われます。
法例廃止の発端は,平成13年3月30日に閣議決定された「規制改革推進3か年計画」において,債権譲渡の対第三者効力につき債務者の住所地法を準拠法としていた法例12条に(それがバルク・セールの障害になるという-筆者注)クレームがついたことにありました(2006年4月19日(水)「『法の適用に関する通則法』参議院法務委員会通過-特に規制改革との関係で-」を参照)。
そして,それが通則法23条に「改正」される過程では,債権者の常居所地法を準拠法とすべきだとする「たたき台」までが現れる始末でしたが,幸いなことに,それは斥けられました(この「たたき台」によれば,ケイマン法人による債権譲渡の対第三者効力については,ケイマン法が現実に準拠法とされる事態が生じていたことになりますね)。しかし,この「たたき台」だけでなく,通則法23条にも,「債務者の視点」は欠けています(例えば,拙稿「国際私法の現代化における法例10条・12条関連の改正作業の問題点」千葉大学法学論集20巻2号(2005年)93頁,特に, 111-118頁, 125-129頁参照)。
通則法が成立した当時の法務大臣は,偶然なのか(必然なのか?),杉浦正健衆議院議員で,杉浦大臣(当時)には,日本国憲法の原文が英文であることが何かよいことのように答弁されたことに驚いたことがありました(2006年4月24日(月)「『法の適用に関する通則法』名称ほか」の後半参照)。
しかしながら,これには米国製の制度に対する抵抗感のなさが表れており,それが債権者の債権回収のための制度改正に突っ走った司法エリートたちの根底に流れているものと共通するものでもあるのだろうと推測します(その根底に流れているものの原因として推測される点については,2008年3月15日(土)「日本のエリートの致命的弱点」参照)。
そして,ここに,「信用」崩壊の一因でもあるのではないかと疑われる「格付け会社」がからんでくるとなると,一貫した構造の存在が疑われることにもなりますね(この関連では,2008年4月1日(火)「格付け制度の破綻?」参照)。
いろいろと思索する契機として貴重な書籍ですので,ご紹介しました。
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コメント
無法回収の書評に感動しました。この視点からもう一度読み返し教訓を引き出したいと思います。
投稿: 宮原 | 2008年11月21日 (金) 03時17分
宮原様
コメントありがとうございます。遅くまで,お疲れさまです。日々学ぶことはなくならないですね。ご活躍をお祈りします。
投稿: 森田博志 | 2008年11月21日 (金) 08時48分
はじめまして。「無法回収」まさに今、体験しているところです。記事に出ている「港債権回収」です。なかなか手強い奴等みたいですな。ww
投稿: naki | 2009年1月17日 (土) 18時51分
nakiさん,コメントありがとうございます。
私の関心は,問題の構造の方にあります。なかなか難しく思っております。
投稿: 森田博志 | 2009年1月18日 (日) 01時11分
>>私の関心は,問題の構造の方にあります
これは失礼しました。個人的な愚痴をコメントしてしまいました。
投稿: naki | 2009年1月23日 (金) 16時20分
nakiさん,再コメントありがとうございます。
ちょっと冷たいお返事になってしまっていました。ご容赦くださいますよう。
投稿: 森田博志 | 2009年1月23日 (金) 22時21分