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2009年4月

2009年4月15日 (水)

国籍法一部改正その後ほか

 ちょっと前のことになりましたが。。。
 小林よしのり氏が責任編集長をされているSAPIO増刊の雑誌『わしズム』が「最終号」と銘打たれているのに気が付き,出版不況はついに小学館にまで及んだか,と思って驚きましたが,同誌によれば,実はそうではなく,小林氏に批判された最近ご活躍の佐藤優氏がSAPIO編集部に圧力をかけてきたことに端を発する苦渋のご選択とのこと。
 事実関係については存じ上げておりませんので論評は控えますが,以前おふたりの著書を興味深く拝読して並べて紹介したことがあり(2006年7月27日(木)「前期授業終了」),複雑な気分ではあります。

 個別の問題を離れて「言論の自由」という一般論に話を移しますと。。。
 もうかなり前になりますが,偶然ですが同僚の間でちょっと議論があり,どちらの言い分も理解できるので黙って聞いておりました。ただ,言論には言論で対抗する,異なる立場の言論でも圧力による言論の排除やレッテル貼りからは守る,というのが大原則であることは,確認しておくべきことであろうとは思いました(但し,匿名のものは,負っているリスクに差がある分,顕名のものと同列には論じられないでしょうね)。
 法律の世界でも,某社の雑誌等には○○分野で某先生に睨まれると書かせてもらえないというような公然の(?)秘密があり,嫌な話も実際に耳にすることがありますが,さすがにまだ具体的な話は書けませんね。

 話は換わって,これまた前のことになりますが,2月28日(土)にNHK-BS1でエマニュエル・トッドのインタビュー番組がありましたね。なかなか興味深いもので,3月22日(日)に再放送されていました。なお,2009年1月31日(土)「E.トッド『世界の多様性』」もご参照いただければ幸いです。

 ついでですが,同氏(平野泰朗訳)の『経済幻想』(藤原書店・1999年)(原著は1998年刊)も非常に面白い本で,冒頭の「日本の読者へ」には以下のような記述があります。

 日本は,まぎれもなく経済大国の1つである。……本書で見るように,日本は,人類学上の理由から,アングロサクソン・モデルとはきわめて異なった資本主義の調整されたモデルを示している。……国民国家による調整という考え方の,積極的な擁護者となれる。人類学上の基盤のせいで,日本は,集団行動に長けている。孤独で空虚な絶対的個人という考え方は,日本の文脈では想定できない。……多くの領域で,日本は,世界のトップにいる。例えば,幼児死亡率は,世界で最も低い。日本は,アングロサクソン世界と同じくらい,その経験と成功を人類社会に提示する権利がある。……

(トッド・前掲2頁)
 トッド氏からも一定の役割を期待されていた我が国は,その期待に反し,実際にはこの後どんどん米国化していったのですから,皮肉と言うか何と言うか・・・

 米国の文化的な低下・停滞を中心に論じる第2章(特に,62頁あたり)を始めとして興味深い分析が続くのですが,最も印象に残ったのは,自由貿易が万能ではなく需要の不足をもたらすという問題点を指摘する部分です。

   自由貿易と過少消費

 自由貿易は,地理的にも,文化的にも,心理的にも供給を需要から切り離す。A国の生産者とB・C・D・E国の消費者が結びつけられ,逆の関係にもなる。企業家および国からみれば,全体需要(Dg)は,国内需要(Di)と国外需要(Dx)に分けられる。すなわち,Dg=Di+Dx。賃金を支払うことにより国民規模の総需要に貢献しているという感情を企業家がもはやもたなくなる経済世界を,自由貿易は作り上げる。賃金は,世界レベルで集計された場合はアクセス不能な抽象値でしかなく,もはや企業にとって,出来るだけ圧縮するという関心しかない生産費用にすぎない。このような論理が展開すると,技術進歩により生み出された生産性上昇成果に対して,需要が首尾一貫して遅れる理想的条件が出来上がる。取引を「国民の外」で行うことは,資本主義を原初的・前ケインズ的形態に戻す。……

 (中略)

   切り詰めの進む世界

 輸出にとりつかれた社会では,国境の開放が,いつも,後退的心理に火をつける。つまり,費用や支出を絶えず出来るだけ切り詰めようとし,マルサスに従って人口まで抑制しようとする時代精神と共鳴する。賃金を切り詰め,子どもを減らし,労働者を減らし,楽しみも減らそう,これが道である。国民の行政の中心である国家は,自由貿易の環境によりマクロ経済的意義をすべて奪われ,ついに企業のように行動し出す。財政赤字の削減にとりつかれた政治家層は,全体需要の圧縮に進んで協力する。その結果,消費の削減,雇用者数の削減,失業の増大に行かざるを得ない。

(以上,トッド・前掲190-191頁,196頁)

 「価格破壊」というスローガンが叫ばれ始めた頃,ただ安ければよいと言っているとたいへんなことになる(私たちは,単なる消費者ではなく,給与所得者でもあるのですから)と思っていたところ,某国製のの悪い衣料品が出回ったり,それが改良されてきたと思っていると賃金がじりじりと下がり始め,・・・振り返ってみると,いろんな意味で生活レベルが落ちてきたことを実感します。
 良い物やサービスにはそのに相応しい対価が支払われるべきだという了解がないと,このままどんどん沈んでいってしまうのでしょう。あるいは,格差が広がってきたために低価格のものにしか手が出せない人たちが増えてしまっていて,上記のような了解が復活したとしても,もう手遅れなのかもしれませんが・・・

 「訳者あとがき」から,上記引用部分に関するものを引用しますと,

 自由貿易批判と保護主義の擁護  そして,この世界的需要不足……を避ける手だては,彼によれば,国外に対する保護主義と国内での自由競争である。こうした提案も,理論的には十分根拠があり,傾聴に値する。ただし,各国がどういう保護主義政策を相互に認め合うかは,難しいであろうが。
 この保護主義の提案は,国民主義(ナショナリズム)の再生を意味する。トッドにとって,国民こそが,人間が個人的であると同時に共同的になれる,最も確かな枠組みであるからだ。この認識は,彼の長年の人類学的考察から得られたものであることは,本文を読めば,直ちに分かる。(後略)

(トッド・前掲387頁(平野泰朗))
 トッドと少し観点は異なりますが,中野剛志『経済はナショナリズムで動く-国力の政治経済学』(PHP研究所・2008年)も,まず内なる力を主体的に充実させようという「当たり前のこと」が書かれていると思われます。これは,現在でも他国の動向に合わせようとする風潮が続いているからこそ,なおさら貴重な書物であると思われます。

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 さて,国籍法に話を移します。これまで重要な文献がいくつか出ていますので,それらに触れながら進めていきます。

 最初に採り上げるのは,近藤博徳「国籍法違憲訴訟-大法廷判決獲得までのあゆみ」法学セミナー651号(2009年)26頁です。著者は,平成20年6月4日の2つの大法廷判決の代理人として名を連ねておられますが,「代理人として実質的な活動をしたのは専ら第二事件〔国籍確認請求事件の方-引用者注〕」とのこと。
 その第1審の審理の経過の記述の中に,次の一節があります。

 さらに裁判所は,第3回期日に双方に対し,「準正によって日本社会との結びつきが強くなるという点について社会実態の有無も含めて調査し主張されたい」と指示した。しかし国側は,第4回期日にその回答を提出することができなかった。私たちは,「準正によって日本社会との結びつきが強まる」との国の主張を支える立法事実が存在しないことが証明された,と確信した。

(近藤・前掲28頁)
 これが事実なのだとすると,国(法務省)は,この段階では国籍法(旧)3条1項の婚姻要件の維持を諦めていた,ということになるのでしょうか。国籍法に関心をもっていた研究者も現在ほど多くなかった当時の状況に照らすとやむを得なかったようにも思われますが,どうなんでしょう?(ただ,「社会実態の有無も含めて調査」するための時間的余裕が与えられていたのかという疑問も生じはします。)
 それと,もう1点。「法改正と適正な運用へ向けて」という項目中の一節です。

衆議院での採決のころから,この法改正が「偽装認知を容認し,不法外国人の流入を増大させる」とのデマが流れ,……結局,改正法は法案通り成立したが,衆参両院で付帯決議が付き,さらにもっぱら偽装認知防止のみを目的とした施行規則の改正が行われた。その結果,国籍取得の手続はこれまでよりも格段に厳格になったばかりでなく,手続自体が障害となって国籍取得が困難になってしまった。

(近藤・前掲29頁)
 関係の施行規則や通達等は,戸籍時報636号(2009年)4頁以下で速報されています。
 ところで,「デマ」と表現されている事実については,確かに不安を煽る過剰反応も散見されはしましたが,現実に外国人犯罪の報道によって治安の悪化を肌で感じている一般の方も多くおられますし,私自身も単に婚姻要件を削除し実効性に疑問が残る罰則を設けただけの改正法には拙速さを感じたものです(「拙速さ」については,他の文献も引用しつつ後述します)。
 その意味では,厳格な手続は必要であると思いますが,他方で,法律レベルでの規律ではなく法務省の裁量にかかるものですので,手続がいつの間にか緩いものに変わっていた,ということも起こり得るのがやや心配です。

 改正法施行後の状況については,「国籍問題を検証する議員連盟(平沼赳夫会長)」における当局の説明を報告される,赤池誠章衆議院議員の以下の2つのブログ記事が詳細です。
 「2月25日(水)国籍議連で施行後の対応をチェック」
 「4月7日(火)第6回国籍議連でチェック」

 国籍法(旧)3条1項の婚姻要件が担っていた2つの意味,つまり,①「我が国との密接な結び付き」,②「仮装(偽装)認知による国籍取得の防止」のうち,上記の手続は②に関するものですが,上記の手続が適切なのか,DNA鑑定を導入すべきなのかが問題として残っています。
 3条1項のみを考えるのであれば,DNA鑑定の導入は,「国籍取得届という公法行為」の部分でなければなりません(2008年12月14日(日)「私法上の『認知』と『国籍取得届』」参照)。
 それだけでなく,赤池議員の2月25日付のブログ記事に出てくる,NHKのニュース等でも報道された中国人女性の子の偽装認知は,「胎児認知」であって国籍法2条1号の問題ですので,こちらについても憂慮すべき事態が生じていると判断するのであれば,合わせて検討する必要があります。その際,2条1号の場合は(3条1項の場合と異なり)国籍取得のための特別の手続はありませんので,何らかの手続を新設する必要があるのかもしれません。

 ①「我が国との密接な結び付き」についても,再検討が必要です。大法廷判決は,婚姻要件がもはやその指標にはならないとして単純に削除してしまったわけですが,まともな国際私法学者にとってこの点が気にならないわけがありません。いずれも,程度の差はあれ直接存じ上げている方々ですが,公表順に引用しておきます。

本判決の今後の国籍法改正に対する影響という点については,さらに慎重な検討を要すると考えられる。本判決も,国籍付与について,血統主義に加えて,子と我が国との密接関係性を要求すること(国籍法3条の立法目的)自体,合理性があるとする。したがって,改正において,本判決の基礎となった国籍付与要件とは別に,子と我が国との密接関係性を確保するための要件を付加することは可能であろう。このことは,結局,立法論としては,国籍法3条1項の存在を前提とした平等原則を基礎とする検討のみでは足りず,日本国籍付与の意義およびその範囲についての実質的な議論が必要となることを意味する。

(竹下啓介「国籍法3条1項を違憲とした最高裁判決」法学セミナー647号(2008年)6頁,7頁)

そのような要件を必要と考えるかどうか。それから,もし必要だとしたときに,具体的にどういう要件を入れるかは,立法論としては非常に難しい問題だと思います。それやこれやを考えると,国籍法全体を,もう少し基本的な原理原則から考え直して構成するという作業がゆくゆくは必要になるのではないか,パッチワーク的に修正していくと,だんだんおかしくなってくるかもしれないという感じがいたします。そのような根本的な立法作業の際には,国籍法を背後から支えるものとして,出入国管理等の外国人政策・移民政策に関する高度に政治的な問題について,大局的・長期的視野に立った十分な検討をすることも必要不可欠になるでしょう。

(高橋和之=岩沢雄司=早川眞一郎「〔鼎談〕国籍法違憲判決をめぐって」ジュリスト1366号(2008年)44頁,71頁(早川発言))

本件で直接問われたのは,日本人男性と外国人女性の非嫡出子につき,準正を「家族生活を通じた我が国社会との密接な結び付き」の指標とすることの合理性のはずである。多数意見は,「家族生活や親子関係」一般の実態・意識の変化を1つの論拠とするばかりか,婚姻・親子関係の「実態」・「認識」が「複雑多様」な「両親の一方のみが日本国民である場合」の一類型たる日本人男性・外国人女性の非嫡出子については,その「近年」の「増加」に触れるのみである。以上から,「近年」の合理的関連性欠如が論証されているといえるか。仮にいえるとして,逆に改正当時には合理的関連性が存在していたといえるか。家族生活・親子関係一般……の実態・意識の変化が,本件で直接問題となっている類型の子の「我が国(社会)との密接な結び付き」を論ずるにつきどのように関係するのか。多数意見の同論証が必ずしも十分でないことは,そもそも論証の核にある「我が国(社会)との密接な結び付き」の意義が明確でないことにも起因すると思われる。

(原田央「最高裁平成20年6月4日大法廷判決をめぐって-国際私法の観点から」法学教室341号(2009年)6頁,9頁)

 以上のものとは対照的に今般の3条1項の改正までも積極評価される国友明彦教授でさえ,以下のように論じてもおられます。

本判決の射程は,本件の事実関係からして,外国人母から日本国内で出生し,日本人父に生後認知された時及び国籍取得の届出時に国内に住所を有する子に及ぶものと考えられる。

 (中略)

例えば,もし政府又は立法府において,出生地,認知時の子の住所,現在の子の住所のいずれかが外国にある場合の国籍付与については特に慎重な検討が必要であると考えるのであれば,応急的な立法措置として,例えば,上記3つの地が日本国内にある場合に限定して届出による国籍取得権を付与する立法を行って,その他の場合を含めた一般的な改正については法制審議会に部会を設けて検討することとしても本違憲判決の効力には反しないこととなる。

(以上,国友明彦「国籍法の改正-国際私法的観点から」ジュリスト1374号(2009年)15頁,18頁,19頁注23)
 大法廷判決に反対である私の立場からも,それでも大法廷判決を尊重して3条1項を至急改正するというなら,上記の線であればまだ穏当だと判断したと思います。しかしながら,実際にはこれに止まらなかったのですから,「拙速」であったと言わざるを得ません。
 この点については,「改正法の立法過程について」「止むを得なかった」とされる国友教授でさえ,以下のようにも評されています。

  本件においては法令違憲として請求を認容したことに対しては,「かなりの副作用をもたらす劇薬」という評価もあるが,立法手続が通常の場合に比して非民主的かつ急いだものであったこともその「副作用」の1つと言えよう。例えば,後述Ⅴ2のような外国法に基づく好意認知の問題についても本来であれば事前に検討すべきであったであろう。

(国友・前掲19頁)
 基本的な立場は異なりますが,引用部分には賛成です。
 なお,「Ⅳ改正法の趣旨について」という項目で示されている国友説については,全てが希望的な「可能性」の指摘としか理解できないので,大いに疑問です。「可能性」ではなく,実態で判断すべきではないのでしょうか?
 最後に,「Ⅵ国籍法2条解釈への影響」という項目で,次のように論じておられます。

 最判平成9・10・17民集51巻9号3925頁,同平成15・6・12家月56巻1号107頁ほかの判例によって,生後認知ではあるが戸籍実務上の嫡出推定のために胎児認知届を出すことができなかった等の事情がある場合に例外的に法2条に該当することが認められている。しかし,これら判例の解釈は,生後認知による国籍取得権のないことを前提とした解釈であり,改正法が施行された今となっては生後認知による父子関係の成立なのに法2条に該当するという無理な解釈を続ける必要はないように思われる。

(国友・前掲21頁)
 確かに,やや「無理」をした「解釈」という感じはしています。ただ,改正法においても,2条と3条とでは要件・効果ともに異なりますので,少なくとも関係の方々にとっては「必要はない」ということにはならないのではないかと思われます。

 いずれにしても,理論的にも実際的にも広い視野で統一的に検討すべき問題について,「拙速」かつ射程の広すぎる改正がなされてしまった以上,再改正をも視野に入れた全面的な検討がなされるべきであると考えております。

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2009年4月12日 (日)

郵政事業に関する参考人質疑-4月7日参院総務委質疑から

 あっと言う間に春休みも終わり,新年度の授業が始まりました。また,今年度は3年生のクラス担任を仰せつかり,早々に懇親の場を設けました。気のいい学生たちで,途中から別のクラスの学生若干名も参加し,久し振りに大笑いの数時間を過ごすことができました。

 さて,目の前の小さな課題に追われて,ちょっと大きな問題をまとめる時間がとれていないのが残念です。

 本日は,先週7日(火)に参議院総務委員会で行われた,郵政事業に関する集中審議の会議録がアップされましたので,その一部を転載します(午前中の参考人質疑における参考人は,石井晴夫東洋大学経営学部教授,吉田和男京都大学大学院経済学研究科教授,ジャーナリストの東谷暁氏の3名でした)。午後の質疑でも極めて重要な指摘がなされていますし,会議録にアクセスいただければ,と思います。

(以下,09年4月7日参議院総務委員会会議録から一部転載)
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 (前略)

○外山斎君 民主党・新緑風会・国民新・日本の外山斎です。今日は会派を代表して質問をさせていただきます。
 まず、参考人三名の方にお尋ねしますが、二〇〇四年九月に小泉内閣で閣議決定された郵政民営化の基本方針の中で、「明治以来の大改革である郵政民営化は、国民に大きな利益をもたらす。」と述べられているわけでありますが、実際に郵政民営化が始まったら、いろいろな面でサービスのダウンとかそういった声が指摘されているわけで、どちらかというと、国民に大きな利益をもたらすというよりも損を与えている印象の方が強いと思います。
 そういった中で、鳩山総務大臣が郵政民営化を語るときに、郵政民営化には光と影があるという言葉をよく使われているわけでありますが、多くの国民の皆さんは、どちらかというと影の部分しか感じていないのではないかと思いますが、郵政民営化が実施されてどのような光があったのか、またそれと同時に、影が目立ってきているわけですが、今後このままこの郵政民営化を続けていって当初のように大きな利益をもたらすということが本当に郵政事業にあり得るのかどうかというものをお尋ねしたいと思います。
○委員長(内藤正光君) 順次御発言願います。
○参考人(石井晴夫君) それでは、まず郵政民営化の光と影ですけれども、光というのは、私もある雑誌の対談で、何かサービスが上がったところはありますかというふうに聞かれたとき、いろいろ考えたんですけど、郵便局が照明が強くなって明るくなったというところは間違いないんですね。あと、掃除が行き届く。要するに、ふだんでもフロアもできるだけ掃除をするとか、カウンターの上にPR、広報誌だとか何かそういう物が置かれなくなった、張り紙がない、そういう個々の郵便局の創意工夫でいろいろウインドーにいろんな地元の方々が飾るようなそういう物も置かれなくなってしまったとか、これは本社、支社の指示です。
 そういうものについてはありますけど、とにかく郵便局見ても、皆様方も御存じのように、職員の方が立って応対をするというのが郵便事業部門と、それから保険部門ですね。ゆうちょ銀行は、これは間違うといけませんので座って接客をやっております。あとは、できるだけ接客の始めは立って行うというようなことが行われているそうです。
 あと、ほかに考えるとすれば何もないと、光は、というのが現実であるというふうに私は思います。それはなぜかというと、もう悪いところを挙げると切りがないですね。つまり、お客様サービスの面、あるいは内部の問題、外部の問題、両方ですね。
 一番端的な例が、昨日まで隣の人が来ていて、もう家族構成もその人の素性も何も全部分かっているのに、改めて、ある一定の金額以上の出す場合、それから送金の場合も十万円以上の送金です、こういったものについては書類が必要になるとか、本人確認、これはもう大変ですよね。それから、説明責任の名の下において、これは保険の場合は特にそうなんですけど、物すごく時間が掛かる。ですから、簡易生命保険に入ろうと思って行った場合でも、前の人が説明受けているともう十分、二十分たってしまうというのは皆様方も御経験があるんじゃないかと思うんですけど。もう本当に考えられないようなマニュアルどおりの説明を果たさなきゃいけない、これはすべてにわたってがそうなんですね。
 それで、とにかく待ち時間が多くなり、そしてお客様が込んでいるときに、特に、東京都内もそうなんですけど、特定郵便局も東京都内の中心部の特定局は昼休みに集中するんですね。ところが、特定局であればお互いに助け合うというのがこれはできるんですけど、これが普通局に行ってしまうとこれはできない仕組みになっています。つまり、三事業会社それぞれが別々になっていますので、助けていくにいけないということですね。今まではみんな一つのワンカウンターで、お互いに協力し合ってスムーズに接客サービスを行っていたのが、それができないということです。
 それから、様々なところでとにかくお客さんが分からないんですね。会社が分かれていますので、質問しても、いやこれはゆうちょ銀行の話です、これはかんぽ生命の話ですといって、それぞれの対応がみんな会社によって分かれてしまいますので、一つのところでワンストップでサービスができないという状況にあります。ですから、いろんなお客様に対しての説明が、言っている本人も非常にコンヒューズしていますので、今はかなり整理されてきていますけど、それでもお客さんはよく分からないのが実情であるということなんですね。
 ですから、事例を挙げれば切りがないんですけど、一事が万事そういう状況であります。
 以上です。
○参考人(吉田和男君) 民営化がどういうプラスとマイナスを及ぼすか。なかなか、まだ民営化してすぐだから、そう目立ってプラスというのは出てこないかと思うわけですね。NTTでもJRでもJTでも、やっぱり時間を掛けて民間会社としての効率的経営を行うことによってそれが消費者にフィードバックされるということだと思うわけです。
 簡単に申しますと、かつての郵政の状況ですと、コストが上がる、いろんな形でコストが上がる、そうすると郵便料金を上げる、そういう仕組みなわけで、それは別に何の不思議もないことであったわけです。しかし、郵便にしても完全に独占ではありませんから、中の効率化というものを進めて、そして料金を引き上げないで抑えていくことができれば、これが一番大きなメリットではないかなと思うわけです。
 郵便貯金、簡易保険に関しては、これはまだかなり気の長い話で、受信部門はありますが、与信部門が完全ではありませんから、こういうもの、まさに普通の銀行、普通の保険会社として効率的でかつサービスの高い仕事ができていくかどうか、もう少し時間が掛かって目に見えてくると思います。
○参考人(東谷暁君) 私は少し数字的なものをまた挙げたいと思います。
 二〇〇八年五月三十日、日本郵政が発表した同期三月期の決算というのがありまして、このとき多くのマスコミは予測に比べて利益が非常に上がったという報道をいたしました。しかし、これも非常におかしな報道でありまして、実はこういうことだったんです。
 当期純利益が二千七百七十二億円で、政府に提出した承継計画の二千百五十億円を三〇%ぐらい上回ったんだということになっていたわけであります。しかし、これちゃんと調べれば、元々の承継計画というのはこんな少額じゃなかったんです。元々の承継計画では、純利益は二千九百七十億円が予定されていた。それがだんだんそういう目標が達成できないと分かるや、いつの間にか数字がすり替えられていた。それが国会にちゃんと報告されていたかというと、これもおかしいという話がございます、されていなかったのではないか。いったん決めた承継計画を、金額を下げて、それで当初よりずっと低い金額しか純利益は上がらなかったのに大成功だというふうに見せなくてはいけなかった、まずここが不思議なんですね。
 それから、非常に特徴的に現れましたのが、二〇〇八年七月、稼ぎ頭になると言われておりましたゆうパックが赤字だということが発覚いたしました。これはクロネコヤマトをつぶしてしまうんだとか、なかなかすごい言われ方をしていたのですが、ふたを開けてみたら五億千百万円の赤字に転落したということが分かった。私は、これはなぜこんなことが起こったのか調べてみましたら、先ほど石井先生がおっしゃっていたように、余りにも郵便局に余計な負担が掛かるようになってしまって、昔の特定郵便局ですね、郵便局の局長さんたちがほとんど動けなくなってしまった。
 実は、ゆうパックってどういうふうにして支えられていたかというと、暇を見て、これは地方のことですよ、地方のゆうパックは、局長さんたちがコンビニとかスーパーとかそういうところを自分の車で回って歩いて集配していた、それで支えられていたんですね。ところが、そういうものができなくなった。しかも、組織替えがあったわけでありますが、組織替えが行われた結果として多くの局長さんたちが希望を失った。このままじゃもう駄目だろうというので、これはちゃんとした数字でありませんが、いろいろな方たちから伺った話の推測をいたしますと、この二年ぐらいで局長さんで四割ぐらい辞めているんじゃないか。こんな事態が民営化成功などということができるのでしょうか。
 それから、もう一つ付け加えておきます。
 官から民へというのがスローガンでありました。お金も官から民へ流れるのだ。ところが、今ゆうちょが持っている資産で何が一番増えているかというと、国債が増えているわけであります。これ官から民へということになるのでしょうか、私は全く違うと思いますね。
 元々お金がどういうふうに流れるかというのは、既に二〇〇五年五月に、竹中平蔵さんのブレーンだった高橋洋一さんという方がおられますが、この方がシミュレーションを作っておりました。シミュレーションによれば、国内の資産が最終的に流れ込む先というものを計算できるわけであります。
 二〇〇三年末では、中央・地方政府が全体の七二%、企業へ流れ込むお金が一九%、特殊法人が九%でございます。それが高橋さんのシミュレーションでは、二〇一七年には中央・地方政府が七四%増えるんですね、これ。企業が二二%、やや増えます。特殊法人が四%になる。だって、特殊法人は廃止していくわけでありますから減るのは当たり前です。シミュレーションでも全然官から民でないのに、官から民に流れるんだというスローガンを掲げた政権というのはやはり国民を裏切っていたのではないか。これは別に高橋さんがシミュレーションする以前に分かっていたことなんですね。今のような財政構造だったら、官から民へ流すなんということは非常に難しいわけであります。
 というふうに、いろいろな数字をきっちり見ていきますと、どうしても民営化によって何かいいことがあったというふうには私には思えない、少なくとも今の時点ではとても見えないというのが実情ではないかと思います。
 以上です。

 (中略)

○二之湯智君 郵政民営化、一年半たち、そして自民党の方でも、与党の方でも郵政民営化の推進に関する検証あるいは検討というプロジェクトチームが立ち上がりまして、せんだってもいろいろと意見がまとめられたわけでございますけれども、民営化を今更国営化にするとかいうことはちょっと考えられないというか、そこまで踏み込んだことはないんでございますが、いろいろと改善すべき点があるんじゃないかと、こう思うわけでございます。
 私たちも単純に考えて、一つの郵便局で郵便と貯金と簡保が一緒に業務をしてもらったら大変使い勝手としてはいいんじゃないかと、こう思うわけでございますけれども、そのことに関しまして、済みません、東谷参考人から順番にお願いしたいと思います。
○委員長(内藤正光君) 順次三人ですね。
○二之湯智君 はい。
○委員長(内藤正光君) なお、持ち時間は二十五分となっております。申し訳ございません。
○参考人(東谷暁君) 私が取材したところでは、それから私も随分郵便局は使うんですね。それで、行きますと、分社化してからどうなったかといいますと、全部について別に入力しなくちゃいけないんだそうですよ。本当に延々と待たされてしまう。小さな郵便局には昔は必ずお年寄りの方たちがソファーといいますかベンチに腰掛けていたものであります。それが全く姿を消しました。私が行く幾つかの郵便局からは全く姿を消した。その理由を聞くと、やはり先ほど吉田先生がおっしゃったように、煩雑過ぎちゃって嫌なんだ、それから突然身分証明書を出せと言われるようになった。このことによって、高齢者の方たちが今までこれほど親しくしていた郵便局から何か疎外されたような気持ちになったわけでありますね。それでどんどんどんどん離れていった。そういう現象が起こっている。
 こういう現象も、実はアンケートなども取っているわけであります。郵便局等の満足度調査というものが、これは日本郵政株式会社、郵政会社から出てくるんですが、実はそれ以前に郵便局長へのアンケートというものを郵便局長会でやったわけであります。これはかなり悲惨なものでありまして、お客様が民営化の郵便局のサービスをどのようにとらえていると思いますか、もちろんこれは局長さんたちの主観が入りますが、悪くなったと言われるというのが七三・八%、余り変わらない一四・六%、以前と変わらない七・八%。それから、今度は職員ですね、職員のモチベーションがどうなったか。回答、第一位、低下した七二・一%、それから二位、以前と変わらない二五・三%、三位、高まった二・一%。どういうふうに局長さんたちが将来をとらえているかということでございますが、第一位、時々辞めたいと思う五一・五%、第二位、早く辞めたい二四・五%、そうは思わない二三・七%というふうに、非常にもう希望が持てないという状況になっているわけでありまして、こういうところも丁寧にやはり調査をしていかなくてはいけないのではないか、そういうふうに思っております。
○委員長(内藤正光君) 短い中、申し訳ございません。
○参考人(吉田和男君) 郵便に対するサービス、貯金、簡保もそうですけれども、それぞれそのサービス窓口にシナジーがあるということであるのは間違いないわけですから、郵便局の使い方に関してもっと、これは経営上の問題と私は理解するんですね、経営上の問題としてもっと効率的な方法を探る。民営化して何かいろいろマニュアルをいっぱい作ってそのとおりやらないかぬ。それは民営化の趣旨とは大分感じ、違うと思いますよね。むしろ、お互いにちゃんと契約を結んで、その契約に従って融通できるようにしていく、そういう工夫というのは必要だと思います。
○参考人(石井晴夫君) 非常に重要な点を御指摘いただきまして、やはり使い勝手を良くするために民営化、これはもちろんこのままで、民営化のままで三事業一体で行うということは可能だと思います。ですから、金融二社の、特に全く法律の規制に掛からない一般の商法上の金融二社については日本郵政株式会社法の中で持ち株比率を決めるとか、そういう規制というものはできると思います。
 ですから、その辺のいろんな法律の解釈で、そしてまた法律を新たに作るとか改正するとかいろいろありますけれども、その辺は民間企業であれば、社内カンパニー制という、これは東芝なんかはよく使っておりますけど、そういう中で三事業の区分経理というのをしっかりできるとか、いろんなやり方がございます。
 一つだけ最後に、アルフレッド・チャンドラーという経営学者が、組織は戦略に従うというチャンドラーの命題というのを言っているんですね。要するに、組織は、戦略が変われば、事業が変わればどんどん組織変えればいいんだと。ところが、この郵政事業に関しては、戦略は組織に従うなんですね。つまり、先に組織があって、それで事業が決められているからこんなおかしいことになってしまうというふうに思います。
 以上です。

 (中略)

○山下芳生君 ありがとうございました。
 東谷参考人に伺いたいと思います。文芸春秋の論文、興味深く読ませていただきました。この中で、国民共有の財産なのに竹中さんが不良債権と言っているということを批判されておりましたけれども、私も全く同感で、不良債権なんかじゃないと思います。しっかりと国民のために利用、活用すべき財産をそのような位置付けで、二束三文で、しかもこういう規制緩和を推進してきた人たちがえじきにするような在り方というのはまさにとんでもないことだと思っておるんですが、不良債権として扱うことの不当性について、東谷さんのお考えを伺いたいと思います。
○参考人(東谷暁君) よくぞ聞いてくださいましたというところなんですが、四枚目のCというところに書いておいたわけでありますが、「かんぽの宿は不良債権」というテーマで竹中平蔵さんが、かんぽ生命保険の施設である、ここら辺からもう間違っているわけでありますが、かんぽの宿は今でも年間約五十億円の赤字を計上している。民営化に当たってこれを廃止、売却するのは当然のことであると言っているんですが、不良債権というふうに決め付けることによって何が起こるかということを、この方は社会的影響ということを全く考えていないわけですね。つまり、売却価格が下がるということであります。国有財産の毀損ですね。私は、だから、西川社長は逆に竹中平蔵さんに抗議すべきであったと考えています。
 ところが、面白いことに、私がこの原稿を書きまして、まだ雑誌が出る前ですね、朝日新聞で竹中平蔵さんは、鳩山総務大臣は風評を流して、それで日本郵政の資産を下落させているというふうに批判をしているわけですね。私は、批判されるべきはどちらなのかということをよく国民の皆様には考えていただきたいと思うんですね。最初に不良債権だと決め付けたのは竹中平蔵氏でありまして、しかも竹中平蔵氏がつくった枠組みで今みんな苦労しているわけであります。五年だの、そういう売却してしまわなくちゃいけないような仕組みにしていったのはだれかということをやはり考え直さなくてはいけない。
 私は、ここら辺、本当はもっと詳しく詳しく調べたいというふうに思っております。先ほど申しました「正論」の五月号にも会計について書きましたけれども、また機会があればこういうものを取材して書きたいと思っております。
 以上です。

 (中略)

○又市征治君 社民党の又市です。
 大変お忙しい中、わざわざ当委員会のためにお越しいただいたことに感謝を申し上げたいと思います。
 かんぽの宿のバルク売却の問題については、この間のこの委員会での論議や、あるいは三日の総務大臣の十六の問題点と改善命令が出されまして、一定の教訓と、あるいは方向性が出たかなと、こう思いますが、さらに、そのことだけで終わらせるのではなくて、今日もお述べになっておりますけれども、やはり郵政民営化そのもの、この問題の見直し、徹底した是正ということにつなげていく契機にしなきゃならぬと、こんなふうに思っておるところであります。
 そこで、順次お聞きをいたしたいと思いますが、その意味で、今最後におっしゃった、山下さんが聞かれた東谷参考人の論文、特に西川さんや竹中さんについての部分、大変参考になりました。つまり、竹中大臣と三井住友銀行がどういう利害で一致をして、西川社長と彼の腹心の部下をどういう格好で招いてきたか、あるいは完全民営化までの間に何をやってしまおうとしているのかということなどについては大変に参考になったところであります。
 東谷さんは、かんぽの宿売却は、純然たる民間企業の不良資産処理ではない。にもかかわらず、民間ですら露骨なこととうわさされるような、あざとい手口だとお書きになって、また、かんぽの宿事件は単発の不祥事ではなく、郵政民営化がもたらした合法と違法の境界破壊のおぞましい結果だと。そして、昨日まで国民の資産だったものが、本日からは切り分けられて合法的に一部の者たちの利権になる、こういうふうに考えておられるわけですが。
 そこで、お伺いするんですけれども、西川さんの昔の功績とされる不良債権処理、この不良債権処理なんてかぎ括弧付く中身だと思うんですが、実はこの言葉を竹中さんが利用して、かんぽの問題について今おっしゃった産経新聞への投稿で竹中さんが使っているわけですけれども、そうすると、東谷さんは、竹中さんが西川さんを社長に指名してきたねらいというのも、むしろこういう不良債権とレッテルを張って強引にもう売らせてしまおうということのねらいとして西川さんを引っ張ってくる、そういうねらいがあった、こんなふうに見ておられるんですか。
○参考人(東谷暁君) 証拠がない限りそういうことは決して言えないわけでありまして、ただ、私が申し上げたいのは、非常に奇妙な逆転現象が起こっているわけであります。
 西川社長という方は、いろいろ調べれば調べるほど、不良債権を高く売ることで名を上げた方であります。ところが、今回に限ってはなるだけ安く売ろうとしているわけであります。不思議なことなんです。住友時代に西川さんがどういう事業で名を上げられたか、一連の事業をずっと見ていきますと、不良債権をうまく使ってゴルフ場を造ってそれで元を取るとか非常にうまいやり方をしていた。プロなんですね。不良債権処理のプロの方がなぜこのような失態を犯すのか、私には全く分かりません。そのことが非常に今回の原稿を書く動機の一つになっております。それだけは申し上げられます。
○又市征治君 それじゃ、東谷さんにもう一問お伺いをしますが、郵貯の資金を使ってアメリカの御機嫌を伺い、また同様に簡保市場も譲渡してしまえば日本郵政はただの抜け殻であり、かんぽの宿などは不良債権としてたたき売ることしか念頭になかった、こんなふうにお書きになっていますね。
 では、竹中さんの簡保以上の更に長期的な目的はどうか。おっしゃっているように、郵貯の資金と簡保の市場をアメリカに開放することだと私もこれはかねてから主張してまいりました。なかなかだけども明確な証拠だとかがつかめない。具体例としてはゴールドマン・サックスの問題をお書きになっていますが、ゴールドマン・サックスのポールソン氏、後のアメリカの財務長官になられた方ですが、彼が竹中氏に三井住友への仲介を求め、二〇〇二年十二月に秘密会談が行われ、三井住友はゴールドマン・サックス社の増資で生き返った。以来、西川、竹中両氏の関係が緊密になった。これは渡邉恒雄氏の発言からも裏付けられるとお書きになっているわけですが、竹中さんがゴールドマンあるいはアメリカの金融界総体のむしろエージェントだと、こういう格好になるわけですが、そこのところをもし補足なさる点があれば、お伺いをしておきたいと思います。
○参考人(東谷暁君) 残念ながら、証拠をもって今そのことを例示するということはできません。なかなか難しいんです。
 ただ、今回、書いていない部分がありまして、これは実は週刊文春ででもやはり同じように報道されておりまして、幾つも幾つも竹中氏はそういう指摘をされている。しかし、一切そのことに対して反対をされていないということなんですね。私は、やはり何らかの形で竹中氏にはそういうことはないのだと明言していただきたい。そうでない限り、状況的にゴールドマン・サックスなど、その他アメリカに対して郵貯の資金を都合を付けたいのではなかったかという疑惑は幾らでも沸き上がってくるわけであります。
 それから、郵政民営化の際に郵政民営化担当大臣をなさっていたわけでありますが、そのときに、年次報告書のことについても質問を受けるたびに回答の趣旨が変わっていったということがございました。やはりこういうところも私は不自然だと思っておりまして、こういう点も何らかの形で竹中氏に明言をしていただきたい。私は、そういう機会があっていいのじゃないかと思っております。
 証拠をもって竹中氏がどういう意図を持っていたかということはなかなかできないのでありますが、竹中氏が例えばアメリカに対して特に便宜を図るということはしていないと明言しておきながら、例えば昨年の四月放映のBS朝日で、突然のように日本の郵貯を使ってアメリカに支援をしようという意味のことを急に言い出すと。これは今までの竹中氏の姿勢からすれば非常におかしな発言だったわけであります。この発言の際にも、いろいろ批判されてもはっきりした明言はしていない。これは先生方のお力で、もう一回そういう明言をしていただくような機会をつくっていただければと私は思っております。
 以上です。
○又市征治君 今の件については、衆議院も参議院もこの場に出ていただくことを要求したんですが、おいでにならないという、こういう状況でございまして、更に国会としては努力しなきゃいかぬのだろうと思います。
 それから最後に、東谷さんにもう一点。合法と違法の境界破壊をさせないために一体何を今すべきだというふうにお考えなのか、端的にお答えいただきたいと思います。
○参考人(東谷暁君) 繰り返すようですが、やはり今の段階で株式の凍結、これが一番必要だと思います。
 経営がどうなっているかというのをまだ国民もよく知らないわけであります。私が本を書いたりレポートしたりすると皆さん驚くんですよ。えっ、本当に郵政というのは民営化してそんなにうまくいっていないのと、そういう話になってしまっているわけであります。全く郵政民営化に関しての情報に非常な乖離が見られるわけであります。実態というものをやはりもっと国民の前に明かしていく。どういう状態になったのかというのを分からなければ国民は判断しようがないわけです。
 ところが、一方では、今度のかんぽの宿の売却問題に関しても、経済誌などが全く経済原理からだけの報道をして、こうやって不良債権を、竹中氏の言う、不良債権を放置していればますます不良債権が安くなってしまうぞと、そういう議論だけをしたがる。だけれども、その前に、それが違法か違法でないか以前に、これが本当に公正なのかどうか、それは非常に大切なことではないかと私は思っております。
 以上です。

 (後略)

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(以上,09年4月7日参議院総務委員会会議録から一部転載)

 郵政問題については,最近のものでは,紺谷典子『平成経済20年史』(幻冬舎新書・2008年)356-387頁,平沼赳夫『7人の政治家の7つの大罪』(講談社・2009年)20-70頁が分かりやすいかと思います。

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