外国人父からの人身保護請求ほか
大震災による被害が甚大なうえに、まだまだ余震も収まりませんが、命を奪われなかった者は、それに相応しい生き方をせねばと、気持ちを新たにするばかりです(容易なことではありませんが)。
今年度については大地震の前にまた雑用係を引き受けてしまっていましたので、昨年度末は、度重なる地震の度に中断しながら短いもの(下記の1.)を書いておりました。下記の1.は、ネットで読めるのではないかと思いますので、ご笑覧いただければ幸いです(後者は数か月後?)。
1.「外国人父を子の単独監護権者とする米国判決の承認と人身保護請求」(大阪高決平成22年2月18日家月63巻1号99頁) TKC速報判例解説・文献番号z18817009-00-160030618(Web版2011年3月23日掲載)。
これは、最近話題の「DV外国人父から子を連れて逃げ帰った日本人母に対する子の引渡し請求」に関するものです。
2.「<資料>『国際裁判管轄法制に関する中間試案』に対する意見」千葉大学法学論集25巻4号(2011年)181頁。
これは、国際裁判管轄立法案(呪われて(?)、店晒し)の立案過程において法務省民事局参事官室に送付した愚見に(法案がなかなか成立しないので)若干の注を付して活字化したものにすぎません。
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民法(債権法)改正については、加藤雅信教授の一連の論考に考えさせられるところが大きく、前々回の本ブログの記事に引用したものに続く文献のタイトルのみ掲げておきます。「改正」の方向の中身については専門外でも、手続きの部分は他の分野の研究者にも大きく関わる可能性のあるものですので、未読の方にはご一読されたく思います。
・加藤雅信「民法典はどこにいくのか-その3 法務省民事局の法制審・民法部会の立ち上げは、閣議決定違反か」法律時報82巻11号57頁、「同-その4 歴史は繰り返す-連続するデュー・プロセス違反」同82巻12号57頁(以上、2010年)、「同-その5・完-広く会議を興し、万機公論に決すべし」同83巻3号(2011年)60頁。
・江頭憲治郎ほか「座談会 債権法改正と日本民法の将来-4月のパブコメ実施を前にして」法律時報83巻4号(2011年)68頁。
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大地震の直前に、「三陸沖北部地震の30年以内の発生確率は90%、宮城県沖地震に至っては99%と予想されている」(藤井聡『公共事業が日本を救う』(文春新書・2010年)173頁)という記述を読んで驚いていたのですが、公共事業一般にレッテルを貼った人たちは、極悪人ですね。
現在の最大の懸案は、福島第一原発から漏れ出す放射性物質の問題ですが、教えられるところが多いのは、以下のものです。
武田邦彦(中部大学)
http://takedanet.com/
小出裕章助教(京大原子炉研究所)
by iwakamiyasumi
http://vimeo.com/21967567
被ばく 放射能について 医学博士 崎山比早子さん
http://www.ustream.tv/recorded/13453891
私はもともと西の人間で、小さい子は放射性ヨウ素が怖いので(大事をとって)関西方面に移しているのですが、この不自然な状況は長くは続けられないでしょう。貧乏学生だった昔を振り返ると今は本当に恵まれていると思いますが、さすがに困惑しています。
広瀬隆『原子炉時限爆弾-大地震におびえる日本列島』(ダイヤモンド社・2010年)152-153頁図57を見ると、原発は日本各地にあり、他方、「日本を取り囲むプレートの配置」(同31頁図6)や「3つの巨大活断層と東海地震・南海地震の関係」(同42頁図14)、藤井・前掲171頁における30年以内の地震の発生確率(「『東海』地震87%、『東南海』地震60~70%、『南海』地震60%」)に照らすと、そうそう回避する場所を探すのも難しい気がしてきます。
米国の支援はこの時期ありがたい反面、これと引き換えにTPPに参加するようなことになれば、戦後の繁栄は完全に終わるでしょう(中野剛志『TPP亡国論』(集英社新書・2011年)参照)。
責任をとるべき人間が責任をとらない状況が半年以上も続いて、また余震が頻発し始めると、それらには関係があるのだろうと感じてしまう私は全く「まじない師」的なのかもしれませんが、このような状況はこの国にとって最大の不幸だと思います。
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コメント
この事件に対する抗告審の最高裁の決定が平成22年08月04日 に出てますけど、平成23年3月23日の記事なら少なくとも紹介すべきでしょう。最高裁判所第二小法廷 平成22(ク)376 人身保護請求棄却決定に対する特別抗告事件平成22年08月04日決定 集民 第234号355頁
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=80580&hanreiKbn=02
最高裁は一事不再理を忘れたようなことを言っていますが、この事件その後どうなったか、ご存知なら教えて下さい?
裁判が始まったら、別の国に逃げれば判決の効力が及ばないのなら、好き放題ですね。日本で裁判が始まったら、別の国に行けば日本の裁判は無効ですか。
欠席裁判が公序良俗に反するって、日本でも欠席裁判やりますよね。公序良俗違反はないんじゃないですか。
外国判決の「既判力」の承認(民訴118条)と「執行力」の承認(民執24条で引用される民訴118条)では、基準時点が違って当然でしょう。既判力なら外国裁判の口頭弁論の終結時以外にありえない。執行力なら執行判決を求める訴えの口頭弁論終了時。今回のケースでは人身保護請求なので、外国判決は債務名義ではなく、「疎明資料」の一つでしかない。
外国判決の既判力を認めたのなら、人身保護請求では、それ以降の事情を「親権者対非親権者」の枠組みで考えるということでしょう。
伺いたいのは、子の親権を定める準拠法は、日本の法の適用に関する通則法によれば、子の本国法で、日本法になるのに、アメリカの裁判所が、現地の法律で親権者を定めている場合、その外国判決は承認されるかという点です。
投稿: | 2011年5月19日 (木) 00時57分
コメント、ありがとうございます。匿名であっても、挨拶くらいされては如何でしょうか?
> 最高裁は一事不再理を忘れたようなことを言っていますが、この事件その後どうなったか、ご存知なら教えて下さい?
お書きの点は民訴の問題ですが、民訴の方では、引用された最高裁の決定に「既判力が認められないと解することには疑問もあるが、人身保護手続による子の引渡請求は、簡易迅速に紛争を処理する点に目的があり、棄却決定は客観的な権利としての引渡請求権の不存在を終局的に確定するものではないと思われる。したがって、再請求は妨げられないという本決定の前提は一応支持することができるであろう。」(越山和広・TKC速報判例解説・文献番号 z18817009-00-060280561 4頁)と解説されています。
この事件のその後については、存じません。
> 裁判が始まったら、別の国に逃げれば判決の効力が及ばないのなら、好き放題ですね。日本で裁判が始まったら、別の国に行けば日本の裁判は無効ですか。
ご趣旨を理解できませんが、他国での日本の判決の承認が当該他国の問題であることは、ご承知のとおりです。万一、判決効が当然に他国に及ぶべきであるという前提でお書きでしたら、その方が余程おかしいと思いますが・・・
> 欠席裁判が公序良俗に反するって、日本でも欠席裁判やりますよね。公序良俗違反はないんじゃないですか。
私の議論は、州裁判所判決は実体的公序違反であるというものです。手続的公序違反とされているのは、高杉評釈の方です。但し、後者においても、「『子の福祉』が日本の親子法の基本理念であることを考慮すれば、子の福祉を考慮せずに単独監護権者を指定した州裁判所の手続自体が、公序(手続的公序)に反すると解することも可能だったのではなかろうか。」(同評釈 40-41頁)とされておりまして、州裁判所判決が「欠席裁判」をしたこと自体が問題にされているわけではありません。
> 外国判決の「既判力」の承認(民訴118 条)と「執行力」の承認(民執24条で引用される民訴118 条)では、基準時点が違って当然でしょう。既判力なら外国裁判の口頭弁論の終結時以外にありえない。執行力なら執行判決を求める訴えの口頭弁論終了時。今回のケースでは人身保護請求なので、外国判決は債務名義ではなく、「疎明資料」の一つでしかない。
「承認」対象である外国判決の基準時と、外国判決に執行力を付与する「執行」判決の基準時の点をお書きのようですが、外国判決はその確定時に初めて承認要件が(立場によっては、公序要件についてそれ以後も刻々と)審査されることになりますから、「承認」については少なくとも外国判決確定時でしょう。お書きのように、「外国裁判の口頭弁論の終結時」ということになりますと、判決が出る前ということになりますが、それでは実体的公序の審査はどのようにすればよろしいのでしょうか??
ちなみに、(確定時の平成21年9月6日でなく)仮に判決時の同年6月10日の時点でも、州裁判所判決は実体的公序違反である可能性が高いのではないかと思います(確定時の判断については、拙稿の本線として書きましたので、再確認いただければ幸いです)。
> 外国判決の既判力を認めたのなら、人身保護請求では、それ以降の事情を「親権者対非親権者」の枠組みで考えるということでしょう。
「外国判決の既判力を認め」るなら、お書きのとおりでしょう。人身保護請求について、渉外事件においては国内事件と異なる基準によるべきだというような議論もあり得ますが、私は国内事件の判例基準を前提としたうえで、しかし本件では州裁判所判決は承認要件を充たしていないと考えていますので、「共同親権者間」の枠組みで処理すべきであったと書いております。
> 伺いたいのは、子の親権を定める準拠法は、日本の法の適用に関する通則法によれば、子の本国法で、日本法になるのに、アメリカの裁判所が、現地の法律で親権者を定めている場合、その外国判決は承認されるかという点です。
私は準拠法要件を課する立場ではありませんし、本件でも準拠法については問われていませんし、それでよいと思っておりますが、学説には異なる立場もあるでしょう。(なぜ私に聞かれるのか、分かりませんが・・・)
投稿: 森田博志 | 2011年5月19日 (木) 03時48分