一時金と引き換えに,(用が済んだ)数年後からは恒常的に負担増だなんて,あまりにも感覚がズレすぎていて・・・。 雇用や福祉の構造「改善」といった方向に話が行かないのは,住んでいる世界があまりにも違うからなのですね(この関連で(?)渋谷で不当逮捕があったとかで,ネットではちょっと騒ぎになっているようですが。。。)
大学祭にかこつけて年休をいただいたのですが,結局お仕事をしているという貧乏性!
最新のジュリスト1366号(11月1日号)で,「国籍法違憲訴訟最高裁大法廷判決」の特集が組まれていて,興味深く拝読しました。特に,高橋和之=岩沢雄司=早川眞一郎「〔鼎談〕国籍法違憲判決をめぐって」(44頁以下)では,高橋教授による「憲法から見た国籍」(46頁以下)の指摘に(他分野の人間としては)啓発される感じがあり,また早川眞一郎教授による全体にわたる鋭い指摘群に自分の問題意識を再確認させられるところがあります。(早川眞一郎先生が国際私法学会の中心に立っていただけるようになれば,学会が浮上する可能性も出てくるのでしょうが・・・ 統制的な現状では,まだまだ難しいのでしょうか?)
もしお時間があれば,私の過去ログ(6月13日(金)「日本国籍の希薄化?-国籍法3条1項違憲大法廷判決(その1)」および6月14日(土)「同(その2)」)にもお目通しいただければ幸いです。
さて,今回は,今年5月に実施された新司法試験の国際関係法(私法系)の第1問について,批判的に若干の検討をさせていただきます。もちろん,私には何の権威もございませんので,批判的に眺めていただければ幸いです(以下,引用は法務省のHPに掲載されている「出題の趣旨」)。
設問1は,成年被後見人の遺言能力の有無を問うものである。遺言能力の準拠法を定める規定は法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)第4条,第5条か,第37条か,同条の「遺言の成立当時」とはいかなる時点かを検討して準拠法を決定し,実質法の本件事案へのあてはめの結果を説明することが求められている。
結論から言うと,この出題(およびその趣旨)は疑問です。まず,4条,5条か,37条かを検討せよとのことですが,『別冊法学セミナー2008』の神前解説(342頁以下)や基本書などを見ていただければ分かるように,遺言能力などの身分的行為能力は各身分関係の準拠法によるというのが圧倒的な通説です。他に書くべきことが多くある中,このような検討をする受験生は,この点を問題視される方の授業を受けたか,逆に勉強が致命的に足りないかのいずれかでしょう。また,単純な知識を問うているだけですので,本番の緊張からど忘れして暫くの間ちょっとしたパニックになった受験生もいるかもしれませんね。
これと比較すると,離婚の際の親権者の決定の準拠法を問う平成18年の第1問設問3は,基本的知識を問うている点では同じように見えても,連結点の決め方に着眼した議論ができるかを見ることができ,それによって性質決定一般についての応用能力があるかも測ることができますので,問題の質としては段違いです(初歩的な論点すぎますが)。
設問2は,遺言の方式の有効性を問うものである。まず,遺言は,遺言の方式の準拠法に関する法律(以下「方式法」という。)第2条が掲げるいずれかの法の定める要件に合致しているときは方式上有効とされること,方式法第5条の規定により,遺言の際の証人の立会いや,被後見人が遺言能力を回復している時に遺言がされたことの証明の方式も「遺言の方式」の中に含まれることを指摘し,その上で,本件事案への方式法第2条の適用の結果を丁寧に述べ,本件遺言は日本民法の要求する方式は満たしていないが,甲国民法が要求する方式は満たしていることを説明する必要がある。そして,証人を1名で足りるとしている甲国民法第T条第2項の規定の適用が方式法第8条の「明らかに公の秩序に反するとき」に該当するかどうかを検討することになる。
こちらは,最後の点を除くと,標準的でしょう。ただ,設問1と併せて,理論的な深みがないうえ準拠実質法の適用にややウエイトがかかっているので,昨年の問題と比較すると(民事法とは区別された選択科目の国際私法としては)物足りない感じですね。また,選択的連結なので甲国法上の方式を充たしている点にのみ触れれば足りるのであって,出題者が「本件遺言は日本民法の要求する方式は満たしていない」ことの説明も要求しているのだとすると,出題者の要領の悪さが目につきます(この点も,その説明を省略する神前・前掲解説342-343頁の方が信頼できます)。いったい,採点基準はどうなっているのでしょう??
また,方式法8条の公序審査の検討を要求しているのは,あまりにセンスが悪いと思います。というのは,遺言保護のために多数の選択肢を用意した選択的連結が2条で採用されていますし,8条でもそれを受けて「明らかに」とあるわけで,もし裁判所がこの程度の内容の違いで公序審査をするようなら要領が悪すぎますし,この法律の趣旨を理解していないのではないかという疑問さえもってしまいます(ここでも,神前・解答例(367頁)が甲国法上の方式の具備を確認してあっさりと終わっているのを支持します)。この点にも配点されているのであれば,前段とも併せて,少しばかり出題者の適格を疑ってしまいます。
設問3は,本件遺言による認知の有効性を問うものである。認知の有効性を定める規定は通則法第37条か,第29条か,同条第1項後段及び第2項前段の「認知の当時」とはいかなる時点か,甲国民法第P条が要求する後見人の同意は通則法第29条第1項後段の「第三者の承諾又は同意」に該当するか,準拠実質法上Yが本件遺言を承諾しているかを検討することが求められている。
この設問は,意表を衝くなかなかの問題だと思います。遺言認知の場合の29条2項の「認知の当時」の意義については,基本書などには当然書かれているもんだと思って確認してみると,意外なことに,平成元年改正前法例につき折茂・各論343頁に記述があるくらいで(神前・前掲解説343頁のとおりで),少々驚きました。これについては,国際私法独自の解釈もありうるとは思いますが,うちの3年生に聞いてみると,その多くは遺言の効力発生時を意味し遺言の準拠法によって決まるという解釈を採っていました(私も最初にこの解釈を思いつきましたし,神前・前掲頁も同様のようです)。
なお,神前・前掲解説と解答例は,出題の趣旨が検討を求めている最後の点を落としているのではないでしょうか? ただ,この点は,結構難しいのではないかという気もしています。つまり,「認知の当時」のAの本国法である日本法によると,民法782条で「成年の子」については「承諾」が必要ですが,ではYが「成年」か否かについてはどのように判断するのでしょうか?
この点,山田204頁注1を参照すると,2つの筋が考えられます。1つは,日本民法上の概念ですので日本法でよいという考え方で,これだと「A死亡の時点においてYは20歳」なので「成年」となり,YがAの遺産分割請求をしている点を捉えて,その前提として認知を「承諾」していると認定することになるのでしょう。もう1つは,「成年」か否かは通則法4条1項によりYの本国法である甲国法だとする筋があって,これだと甲国法の関係規定が示されていませんので,場合分けをすべきことになるのでしょうか?(ちょっと,厄介な問題です。)
以上,第1問を単年度で見れば,まずまずと言えます。ただ,今回は,技術的に過ぎるという感じがします(言い換えると,国際私法の「心」が見えない)。また,3年分をトータルで見ると,第1回に続いて周辺的な領域の問題であり,疑問を覚えます。中心的なところから堂々と,受験生の努力の程度を試してやるぞ,といった出題にしてもらえませんかね。きちんと勉強している学生たちが,気の毒で仕方ありません(レベル的には,十分対応できますが)。
最近のコメント